こんにちは、あひる先生です。今回から新シリーズ「決算教室」を始めます。これまで学んだ決算の読み方を、実在の会社の決算で練習するシリーズです。
最初に大事なお約束
この記事は、公表された決算資料を「教材」として読む練習です。トヨタ株の売買を推奨するものではありませんし、株価の予想もしません。「読み方」を身につけることが目的です。
この記事で使う一次情報
- トヨタ自動車「2026年3月期 決算要旨(決算短信)」
- トヨタ自動車「2026年3月期 決算説明会資料」
- トヨタ自動車 公式サイト「投資家情報」
資料はトヨタ自動車 公式サイト「投資家情報」(https://global.toyota/jp/ir/)で閲覧できます。
※本記事では、上記の公表資料を教材として、決算の読み方を解説します。数字はすべて公表資料に基づき、表は筆者が作成しています。
第1回の教材は、日本でいちばん有名な会社のひとつ——トヨタ自動車(7203・2026年3月期本決算)。この決算、とても面白いんです。なぜなら——
売上は日本企業史上初の50兆円超え。なのに、利益は大幅減。
「売上最高なのに減益?」——増収減益、まさに学んだやつです。なぜそうなったのか、一緒に読んでいきましょう。
この記事を読むと分かること
- トヨタは「何で」稼いでいる会社か
- 決算短信3か所チェックの実践
- 「増収減益」の中身と、数年トレンドの読み方
- PER・PBR・ROEを”実物”で見る練習
STEP0:まず「何で稼ぐ会社か」を見る
セグメントの視点から。トヨタの事業は、決算短信上は主に「自動車事業」「金融事業」「その他の事業」に分かれます。
- 自動車事業…クルマとその部品・用品の設計・製造・販売。トヨタの中心
- 金融事業…クルマを買う人向けのローンやリースなど。「クルマを売る」だけでなく「買うお金まわり」でも稼ぐ仕組み
- その他の事業…上記以外の事業
そして面白いのがここ。今回の決算では、自動車事業は増収減益だった一方、金融事業は増収増益でした。全社の数字だけでは見えない“中身の違い”——セグメントで学んだことが、さっそく実物で確認できます。

全社では増収減益。でも中身は、自動車が減益で金融が増益。セグメントを見ると“物語”が変わるでしょ?
STEP1:決算短信3か所チェック——数字の「結果」
3か所チェック、まずは表紙から。
| 項目 | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 営業収益(売上高) | 50兆6,849億円 | +5.5% |
| 営業利益 | 3兆7,662億円 | ▲21.5% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 3兆8,480億円 | ▲19.2% |
| 連結販売台数 | 959.5万台 | +2.5% |
売上は増えて、利益は減った——きれいな「増収減益」です。4パターンで学んだとおり、増収減益は「即ダメ」ではなく「なぜ利益が減ったか」を確認するサインでしたね。
明るい材料もあります。決算説明会資料によると、電動車の販売は504万台と初めて500万台を超えました(うちHEV462万台)。クルマは売れている。売れているのに利益が減る——ますます「なぜ?」が気になります。
業績予想もチェック。2027年3月期の会社予想は、営業収益51兆円に対し、営業利益3兆円(▲20.3%)——会社自身が、さらなる減益を見込んでいます。年間配当は95円→100円へ増配予想です。
STEP2:なぜ減益?——「風」が数字に表れている
減益の理由は、決算資料で説明されています。大きいのはこの2つ。
① 米国の関税
決算説明会資料では、営業利益の増減要因として米国関税影響がマイナス1兆3,800億円と示されています。これは、「ニュースという風」が決算数字に表れた実例です。「関税」という風が、輸出企業のコストという形で、実際に兆円単位のインパクトになっている——連想の型の“答え合わせ”がここでできます。

関税で▲1兆3,800億円。“ニュースという風”が、決算の数字にほんとに表れてるんだ。
② 諸経費の増加
人件費や研究開発・電動化への投資、資材コストの上昇など。将来のための先行投資の面もあり、「中身を見る」ポイントです。
そして為替。トヨタのような輸出企業は円安が追い風・円高が向かい風になりやすい代表例。決算資料では来期の想定為替レートを1ドル=150円・1ユーロ=180円と置いていることが確認できます——想定為替レート、実物はこうやって出てくるんですね。
STEP3:これからどう見る?——トレンドと指標で一歩深掘り
数年トレンドで見る
「単年でなくトレンドで見る」を実践しましょう。
| 期 | 営業収益 | 営業利益 |
|---|---|---|
| 2023年3月期 | 37.2兆円 | 2.7兆円 |
| 2024年3月期 | 45.1兆円 | 5.4兆円 |
| 2025年3月期 | 48.0兆円 | 4.8兆円 |
| 2026年3月期 | 50.7兆円 | 3.8兆円 |
| 2027年3月期(会社予想) | 51.0兆円 | 3.0兆円 |

見えてくるもの——売上は一貫して右肩上がり。でも営業利益は2024年3月期をピークに減少が続き、会社予想どおりなら3期連続の減益。「成長しているのか?」の答えが、売上と利益で食い違う。だからこそセットで、複数年で見るんでしたね。
なお、会社予想とは別に、株式情報誌や証券会社の企業情報ページでは、翌々期以降の外部予想(さらに先の利益回復を見込む見方など)も確認できます。ただし、これらは会社が公表した確定情報ではなく、予想や算出時点の株価に基づく情報。一次情報とは分けて見ることが大切です。
指標で見る——PER・PBR・ROEの“実物”
学んだ投資指標を、実際のトヨタに当ててみましょう(2026年5月末ごろの株価水準に基づく概算。株価が動けば指標も変わります)。
| 指標 | 概算値 |
|---|---|
| 予想PER | 約12倍前後(来期の会社予想利益ベース) |
| PBR | 約1倍前後 |
| ROE | 直近実績 約10%(来期は利益減少見込みのため低下する計算に) |
| 自己資本比率 | 約38% |
ここで練習したいのは「高い・安いの即断」ではありません。PERの水準だけを見て「割安」と即断するのではなく、なぜその水準になっているのかを考えること。利益が減少する見通しなら、投資家が将来利益に慎重になり、PERが低めに見えることもあります。数字の背景に、STEP2の「風」(関税・為替)がつながっている——指標・決算・マクロが1本の線になる瞬間です。
株価は「これから」で動く
株価は「実績」より「これから」で動きやすい——実際、外部メディアでは、2027年3月期の減益見通しが株価の重しになったとの解説もありました。「売上は史上初の50兆円」という見出しと、株価の反応が食い違うことがある——「事前の期待とのズレ」という教科書の話が、現実でも確認できた形です(株価は複数の要因で動くため、理由を一つに断定はできません)。
今回使った基礎記事(教科書との対応表)
| 今回見たこと | 対応する基礎記事 |
|---|---|
| 増収減益の読み方 | 増収増益とは?4パターン |
| 営業利益・当期利益の違い | 売上高・営業利益・純利益の違い |
| 事業別の中身 | セグメント情報とは? |
| 決算短信の3か所 | 決算短信の読み方 |
| 想定為替レート | 金利・為替と株価 |
| 関税という“風” | 「風が吹けば桶屋が儲かる」連想の型 |
| PER・PBR・ROE | PER・PBR・ROEとは? |
今回の学び——まとめ

見出しの“売上50兆円”で止まらない。中身・理由・見通しまで見るのが“決算が読める”ってことだよ。
- 「増収減益」は中身で読む…50兆円の見出しで止まらず、関税・経費・為替という「なぜ」まで降りる
- セグメントで中身が見える…自動車は増収減益、金融は増収増益。全社の数字だけでは分からない
- トレンドで見る…売上は右肩上がりでも、利益はピークアウト。セットで複数年
- 指標は背景とセット…PERの水準には理由がある。「なぜ?」を考える練習
- 株価は「これから」で動く…実績が最高でも、見通し次第で反応は変わりうる
「決算が読める」とは、こういうことです。ニュースの見出しで止まらず、中身と理由と見通しまで、自分の目で確かめられる——あなたはもう、その道具を全部持っています。
自分でも確かめてみよう
ぜひ一次情報でも確かめてください。トヨタ公式サイト「投資家情報」から、決算短信・決算説明会資料が無料で読めます。
今回のように、売上・利益・業績予想・セグメント・PER・PBR・ROEを一度に確認するには、証券会社の企業情報ページが便利です。これからNISAや個別株投資を始める方は、手数料だけでなく、企業情報・決算情報・指標の見やすさも基準に証券会社を選ぶと、決算チェックがしやすくなります。
▶ 初心者向け|NISA口座はどこで開く?証券会社の選び方を見る
※リンク先の記事にはプロモーションが含まれる場合があります。
あわせて読みたい
- 決算短信の読み方|3か所チェック(今回使った型)
- 増収増益とは?4パターン(増収減益の読み方)
- PER・PBR・ROEとは?(指標の基本)
- NISA口座はどこで開く?証券会社の選び方(決算チェックしやすい口座選び)
最終更新日:2026年7月10日
※本記事は、トヨタ自動車が公表した決算資料等を教材として「決算の読み方」を解説する教育目的の記事であり、同社株をはじめ特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・業績の将来を予想・保証するものでもありません。記載の数字は2026年3月期決算(2026年5月8日発表)の公表情報および2026年5月末ごろの株価水準に基づく概算を含みます。最新かつ正確な情報は、同社の決算短信・有価証券報告書等の一次情報をご確認ください。株式投資には元本割れのリスクがあります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


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