Q1決算のニュースでよく見る「進捗率」。「通期予想に対する進捗率は◯%」——この数字、どう読めばいいか知っていますか?
「1年の4分の1が終わったんだから、25%あれば順調でしょ」——直感的にはそう思えますよね。実はここに、初心者が一番ハマりやすいワナがあります。この記事では、進捗率の意味と計算、「25%目安」が通用しない4つの理由、そして正しい比べ方を整理します。
先に結論
進捗率=累計実績 ÷ 最新の通期会社予想 × 100。決算短信の1ページ目だけで計算できます。
ただし「25%あればOK」は誤解のもと。季節性・会社予想の水準・一時要因に加えて、通期予想の修正で「分母」も動くからです。
正しい使い方は、同じ会社の過去3〜5年の同じ四半期と比べて、「なぜこのペースなのか」を考える入口にすること。点数表ではありません。
この記事を読むと分かること
- 進捗率の計算方法と、3つの似た数字の違い
- 「25%が目安」が通用しない4つの理由
- 正しい比べ方(同じ会社の過去3〜5年)
- 進捗率が使いにくいケースと、読む5ステップ
進捗率とは?——通期予想への「道のり」
日本の上場企業の多くは、期初に「今年はこれくらい稼ぐ予定」という通期の会社予想を出します(決算シーズンの歩き方参照)。
進捗率は、その予想に対して実績がどこまで進んだかの割合です。
進捗率(%)= 累計実績 ÷ 最新の通期会社予想 × 100
たとえば通期予想が営業利益1,000億円の会社が、Q1で300億円稼いだら進捗率30%。決算短信の1ページ目の数字だけで計算できます。
計算のルールを2つだけ。
- 分子と分母は同じ利益項目で…「Q1営業利益÷通期営業利益予想」「Q1純利益÷通期純利益予想」のようにそろえる。段階の違う利益を混ぜない(この記事では営業利益で統一します)
- Q2以降は「累計」で…Q2進捗率=上期累計÷通期予想、Q3=9か月累計÷通期予想。「Q2単独の3か月分」は使いません
似ているけど違う、3つの数字
ここが今日いちばん大事な表です。
| 指標 | 計算 | 分かること |
|---|---|---|
| ①会社予想への進捗率 | Q1実績 ÷ その時点の通期予想 | 当時の会社計画に対する進み具合 |
| ②通期実績に占めるQ1比率 | Q1実績 ÷ 最終的な通期実績 | 実際に利益がどの四半期へ偏ったか(季節性) |
| ③現在の進捗率 | 当期累計実績 ÷ 最新の通期予想 | 今期の会社計画に対する進み具合 |
①と②は、分母が「予想」か「実績」かで意味が変わります。①は計画へのペース、②は結果としての季節配分。ニュースの「進捗率」は①③の意味で使われるのが普通ですが、自分で過去を調べるときにこの2つを混ぜると、比較がズレます。
「25%目安」が通用しない4つの理由

① 事業には「季節」がある
1年の利益は均等に発生しません。年末商戦型(ゲーム・家電など。Q3に利益集中、Q1は静か)、期末集中型(官公庁向け・システム開発など。Q4に納品集中)、比較的均等型(食品・インフラなど)——セグメントで見た「どの事業で稼ぐ会社か」が、四半期の形を決めます。Q1で25%ない=遅れ、とは限りません。
② 会社予想の水準が違う
決算またぎの記事の「期待との差」とつながる話。予想を慎重に出す傾向の会社の進捗率は高く見えやすく、強気に出す傾向の会社は低く見えやすい。なお、予想の傾向は1回では判断できません——過去数年の期初予想・修正・最終実績を並べてはじめて見えてきます。
③ 一時要因で歪む
資産売却益、災害、為替の急変動——四半期の数字は一時要因でブレます。進捗率が異常に高い/低いときほど「なぜ?」を決算説明資料で確認しましょう。
④ 通期予想の修正で「分母」が動く
見落とされがちな本質がこれ。進捗率は分子(実績)だけでなく、分母(会社予想)でも変わります。
- 通期予想が下方修正されると→利益が増えていなくても進捗率は上がる
- 好調と同時に上方修正されると→実績が伸びていても進捗率はあまり上がらない
だから進捗率は、必ず累計実績・最新の通期予想・前回予想からの修正の有無・修正理由とセットで見る。
「進捗率が急に良くなった」の中身が下方修正だった——これに気づけるかが、読める人と読めない人の分かれ目です。
正しい使い方——「同じ会社の過去3〜5年」と比べる
じゃあどうするか。その会社の、過去3〜5年の同じ四半期と比べる。これが基本です。
季節性も予想の傾向も、同じ会社なら毎年似たパターンで現れます。前年1年だけだと、その年に部品不足・災害・為替急変・大型の一時損益があった場合、前年自体が異常値かもしれない——だから複数年です。
| 過去のQ1比率の例 | 読み方 |
|---|---|
| 18%・21%・20%・19% | Q1はおおむね20%前後の会社 |
| 12%・35%・18%・22% | 年ごとのブレが大きく、理由の確認が必要 |
他社との比較は?——まずは同じ会社の過去と。季節性も予想方針も違うため、進捗率だけで他社と優劣を決めない。同業・同決算期・似た事業構造なら、補助材料として使える、という位置づけです。

「25%あるか」ではなく「例年どおりか」。比べる相手を間違えないのが、いちばんのコツです。
進捗率が使いにくいケース
正直に、例外もあります。
- 通期予想がゼロ…分母ゼロで計算不能
- 通期赤字予想…▲100億円予想に対しQ1▲80億円で「80%」と出ても、「順調」とは読めない
- 黒字・赤字の符号が違う…マイナスの進捗率になり、直感的な意味が薄い
- 通期予想を非開示…分母がない
進捗率は、通期黒字予想が示されている会社で使いやすい補助指標。赤字予想・非開示の会社では、前年差・損益改善の理由・事業計画を中心に確認しましょう。
進捗率を読む5ステップ
- 同じ利益項目を選ぶ(基本は営業利益)
- 累計実績を確認(Q1なら3か月、Q2なら6か月累計)
- 最新の通期会社予想を確認(同時に修正されていないかも見る)
- 計算:累計実績÷最新通期予想×100
- 過去3〜5年の同時期と比較し、理由を読む(季節性・一時要因・為替・原材料・関税・セグメント)
そして——進捗率だけで「良い・悪い」を決めず、「なぜこのペースなのか」を探す入口として使う。5分程度でできる、決算を一段深く読むための基本作業です。
実践:トヨタQ1で答え合わせ
2026年8月4日更新:答え合わせ
通期予想の上方修正:営業収益51兆→54兆円、営業利益3兆→3兆4,000億円、純利益3兆→3兆2,500億円(減益率22.0%→15.5%に縮小)。あわせて上限1兆円の自社株買いと株式消却も決議しました
進捗率は、1兆634億÷修正後3.4兆=約31.3%(前年同時点は約36.4%)。修正前の3兆円で割れば35.4%——同じ利益でも、分母の予想が変われば進捗率は変わる。関税影響の詳細と為替前提は、決算説明資料で確認していきます。次の答え合わせはQ2(11月頃)です。
※数値はトヨタ自動車の決算短信(2026年8月4日発表)等に基づきます。
参考——前年のトヨタ:Q1営業利益は1兆1,661億円。Q1発表時点の通期予想は3兆2,000億円だったので、当時の進捗率は約36.4%。一方、最終的な通期実績3兆7,662億円に占めるQ1の比率は約31.0%。36.4%は「当時の計画へのペース」、31.0%は「結果としての季節配分」——上の表の①と②、意味が違う2つの数字です。
※発表後、この欄は速報記事へのリンクに差し替えます。数値は公表済みの実績・予想であり、将来を予想するものではありません。
つまずきポイント(ここで差がつく)
- 「25%ないからダメ」と即断しない…季節性を確認
- 「進捗率が上がった=好調」とも限らない…下方修正で分母が縮んだ可能性
- ①進捗率と②実績構成比を混ぜない…分母が「予想」か「実績」か
- 比べる相手は同じ会社の過去3〜5年…他社比較は補助まで
- 赤字予想・非開示では機能しにくい…使える場面を選ぶ道具
まとめ
- 進捗率=累計実績÷最新の通期会社予想。分子と分母は同じ利益項目、Q2以降は累計で
- 「25%目安」は季節性・予想水準・一時要因・予想修正(分母の変動)の4つで崩れる
- 進捗率(予想が分母)と実績構成比(実績が分母)は別の数字——混ぜない
- 比べる相手は同じ会社の過去3〜5年。進捗率は点数表ではなく「なぜ」を探す入口
- 通期黒字予想の会社で使いやすい補助指標。例外も知っておく
進捗率の材料になる「累計実績」と「通期予想」は、決算短信の最初のページで確認できます。
Q1決算全体の読み方はこちら。
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最終更新日:2026年8月3日
※本記事は決算の読み方に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載のトヨタの数値は公表済みの過去実績・会社予想であり、将来の業績・株価を予想するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


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